検査装置に最適な照明システムの選定ポイント

ライトガイド

製造業における品質管理において、検査装置の照明システムは検査精度を左右する重要な要素です。適切な照明を選定することで、微細な欠陥の検出率向上、検査速度の改善、そして誤検出の削減が可能になります。この記事では、外観検査、寸法測定、色検査など、用途別の照明選定ポイントから、実際の導入事例まで、検査装置の照明システムを選定する際に知っておくべき重要な情報を詳しく解説します。

検査装置における照明の重要性

照明が検査精度に与える影響

検査装置の性能は、カメラやセンサーの性能だけでなく、照明システムによって大きく左右されます。

適切な照明がもたらす効果
  • 欠陥検出率の向上(最大30-50%の改善例も)
  • 検査速度の向上
  • 誤検出(False Positive)の削減
  • 安定した検査結果
  • オペレーター負担の軽減
不適切な照明による問題
  • 見落とし(False Negative)の増加
  • 過検出による生産性低下
  • 検査のばらつき
  • 再検査コストの増加

検査用照明の基本要件

照度(明るさ)

必要照度の目安

  • 一般的な外観検査: 1,000~3,000 lux
  • 微細欠陥検査: 3,000~10,000 lux以上
  • 高速検査: 高照度が必要(露光時間短縮のため)

照度不足は見落としの原因となり、過剰な照度はハレーションを引き起こします。

均一性

検査エリア全体で照度ムラが少ないことが重要です。

均一性の評価

  • 均一度 = 最小照度 / 最大照度
  • 一般的な目標値: 0.8以上(80%以上)
  • 高精度検査: 0.9以上が望ましい

色温度と演色性

色温度(単位: K)

  • 5,000~6,500K: 昼光色(一般的な検査に適している)
  • 色検査では、検査対象に応じた色温度の選定が重要

演色性(Ra)

  • Ra 90以上: 色検査に推奨
  • Ra 80以上: 一般的な検査に適用可能
  • 色の正確な判別が必要な場合は高演色性LEDを選択

安定性と寿命

求められる特性

  • 光量の経時変化が少ない
  • 温度変化による影響が小さい
  • 長寿命(50,000時間以上)
  • 点灯直後から安定した出力

検査の種類別・照明方式の選定

外観検査(表面欠陥検査)

落射照明(リング照明・同軸照明)

特徴
  • カメラの光軸に沿って照明
  • 表面の傷、打痕、異物を検出
  • 正反射が強い
適用例
  • 平滑面の傷検査
  • 金属表面の打痕検査
  • 印刷物の汚れ検査

斜光照明(低角度照明)

特徴
  • 対象物に対して低い角度から照射
  • 微細な凹凸を強調
  • 影によるコントラスト向上
適用例
  • 微細な傷の検出
  • 表面の凹凸検査
  • エンボス文字の読み取り

透過照明(バックライト)

特徴
  • 対象物の背面から照射
  • 輪郭や内部欠陥の検出
  • 高い均一性が求められる
適用例
  • フィルムの異物検査
  • ガラス基板の欠陥検査
  • 液体中の異物検査

ドーム照明(拡散照明)

特徴
  • 全方向から均等に照射
  • 正反射を抑制
  • 曲面や複雑形状に有効
適用例
  • 光沢のある対象物の検査
  • 曲面の欠陥検査適用例
  • マルチアングルからの観察

寸法測定・位置検査

輪郭抽出照明

バックライト方式

  • シルエット画像の取得
  • 高精度な寸法測定
  • エッジ検出の精度向上

テレセントリック照明

  • 平行光による照明
  • 遠近による歪みの影響を排除
  • 高精度測定に必須

色検査・カラーマッチング

高演色性照明

必要な仕様
  • 演色性 Ra 95以上推奨
  • 色温度の安定性
  • 均一な色温度分布
適用例
  • 印刷物の色検査
  • 塗装面の色ムラ検査
  • 食品の色検査

3D形状測定

構造化照明

特徴
  • パターン光を投影
  • 3次元形状の取得
  • 高さ情報の測定
適用例
  • はんだ検査
  • 部品実装検査
  • 表面粗さ測定

光源の種類と特徴

LED照明

メリットデメリット
・長寿命(50,000~100,000時間)
・低発熱
・瞬時点灯・消灯が可能
・小型・軽量
・省エネ
・初期コストがやや高い
・高出力品は放熱対策が必要

主な用途 現在、検査装置照明の主流。ほぼすべての検査用途に適用可能。

ハロゲンランプ

メリットデメリット
・高演色性(Ra 100)
・高照度
・色温度が安定
・短寿命(2,000~5,000時間)
・高発熱
・消費電力が大きい

主な用途 色検査など、演色性が特に重要な用途。ただし、LED技術の進化により、徐々にLEDに置き換わりつつある。

光ファイバー照明

メリット適用例
・狭い場所への照明が可能
・発熱を照射部から分離
・柔軟な配置が可能
・装置内部の照明
・多点照明システム
・熱に弱い対象物の検査

ライトガイド技術の活用

ライトガイドのメリット

検査装置において、ライトガイドは以下の課題を解決します。

空間の制約
  • 狭い検査エリアでも照明可能
  • 光源を装置外に配置できる
  • メンテナンススペースの確保
熱の問題
  • 発熱源を検査エリアから分離
  • 熱による製品への影響を排除
  • センサーの温度ドリフトを防止
均一照明
  • 高い均一度の実現
  • 面光源として機能
  • ムラのない検査

検査装置向けライトガイドの実例

株式会社押野電気製作所株式会社ユーテクノロジーは、検査装置向けにカスタム設計のライトガイドを提供しています。

導入事例

  • 半導体ウエハー検査装置
  • 液晶パネル検査装置
  • フィルム外観検査装置
  • プリント基板検査装置

照明選定の実践的なポイント

カメラとの相性

照明とカメラは一体で考える必要があります。

確認事項

  • カメラの感度特性
  • 露光時間との関係
  • フレームレートへの影響
  • カメラのダイナミックレンジ

対象物の特性理解

表面特性

  • 光沢面: 正反射に注意、拡散照明が有効
  • 粗面: 斜光照明で凹凸を強調
  • 透明体: 透過照明や暗視野照明

色特性

  • 暗色: 高照度が必要
  • 明色: ハレーションに注意
  • 多色: 演色性が重要

環境光の影響

対策

  • 遮光カバーの設置
  • 外光の影響を排除
  • 周囲の反射を考慮
  • 安定した検査環境の構築

メンテナンス性

考慮すべき点

  • LED交換の容易さ
  • 清掃のしやすさ
  • 調整機構の有無
  • 予備品の入手性

コストパフォーマンス

トータルコストの評価

  • 初期導入コスト
  • ランニングコスト(電力、交換部品)
  • メンテナンスコスト
  • 検査精度向上による品質コスト削減効果

まとめ

検査装置の照明システム選定は、検査精度と生産性を左右する重要な要素です。

選定の重要ポイント

  1. 検査目的の明確化 – 何を検出したいのか明確に
  2. 照明方式の適切な選択 – 対象物と欠陥の特性に応じた方式
  3. 照明仕様の最適化 – 照度、均一性、色温度、演色性
  4. 試作評価の実施 – 実際のワークでの検証が不可欠
  5. トータルコストの考慮 – 初期コストとランニングコストのバランス

主要メーカーとその強み

適切な照明システムの選定により、検査装置の性能を最大限に引き出し、品質向上と生産性向上の両立が可能になります。検査要件に応じて、専門メーカーに相談することで、最適なソリューションを見つけることができます。

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